24時間換気のおはなし


新人プランナーの大谷です。
今回もDEMU建築設計事務所 出村さんにお話しを伺っていきます!

その前に、前回のおさらいです。

「工務店を選ぶ基準(温熱環境編)」

  1. A値:0.45/㎡K以下
  2. 住宅性能に応じたエアコン選定をシミュレーションしてもらえること
  3. C値:実測で最低でも1.0c㎡/㎡(できれば0.5c㎡/㎡)以下
  4. 樹脂製サッシュ


出村:かなりざっくりですが、上記の4項目はクリアしたいですね。で、今回は24時間換気についての話です。

大谷:今回は24時間換気の話ということですが、なんで「工務店を選ぶ基準」には入ってないのでしょうか?

出村:はい。まずは換気システムの概要から話しましょうか。そもそも論ですが、なぜ常時換気が必要なのでしょうか?

大谷:CO2や化学物質が発生するから、換気が必要なんですよね。

出村:ですね。
もちろん人が生活するのですからCO2は発生します。またVOCという揮発性の化学物質も空気中に含まれます。これは建材等に使用するボンドなどに含まれています。
これらの汚染物質を換気するために常時換気が建築基準法で義務付けられています。
因みにVOCは塩化ビニルやポリエステルなどのプラスチック系材料を使った新建材が多いほど多くなります。

大谷:新車や新築住宅に入った時の独特の臭いがそれですね。

出村:そうですね。
ちなみにauieや当事務所の建物だと新建材使用量が少なく、無垢材や左官材が多いので、新築でもほとんど匂いません。代わりに「木の良い香りがする」とよく言われます。

大谷:それは分かります!たしかにauieも木の匂いがします。

出村:ちなみに換気システムには、一種換気(以下 一種)と三種換気(以下 三種)があります。二種換気もありますが、あまり使われてないので省きます。

大谷:何が違うのですか?

出村:一種は、給気・排気とも機械で換気する方式です。
三種は排気のみ機械で換気して、給気は各居室に開けられた穴(給気口)から自然給気する方式です。三種は安価なのでもっとも普及している方式です。

大谷:何が違うのですか?

出村:2回目ですね・・・。まぁ、すごく乱暴に言えば、一種換気は熱交換ができるものが殆どなので排熱ロスが少ないのです。(ここでは一種=熱交換機能付きという前提で話します)

大谷:つまり三種は熱交換しないから、ロスが大きいということ?

出村:はい。説明が面倒くさいので詳しくは「一種熱交換換気」でググってください。
例えば熱交換効率90%のシステムだと、室温20°外気温0°の場合、外気を18°近くまで暖めて給気してくれます。


出村:写真は自邸の一種熱交換換気の給気温度です。給気口の温度が19.8°で、この時の室温は22.5°です。顕熱交換効率約90%のシステムなので、概ねスペック通りの結果でしょうか。

大谷:我が家のリビングより暖かい・・・。だったら、やはり「工務店を選ぶ基準」に換気も入れた方が良いのではないですか?

出村:でもイニシャルコストが高いんです!
住宅規模にもよりますが、三種が大体10万円以内でできますが、一種だと3050万円ほど高額になります。(一種にもダクト式やダクトレス式、全熱交換や顕熱交換など色々ありコストも変わります)

大谷:そんなに違うのですか!?

出村:高いですよね。
冒頭に挙げた「工務店を選ぶ基準」の4項目もコストはかかります。ですが、リターンも大きく元も取れるので、やらないと絶対損をするし、不快だし、不健康だし、やらないという選択肢はないという項目を挙げました。
片や一種はイニシャルもですが、システムを動かすための電気代も三種に比べ高額になることが多いです。

大谷:でも話を聞くとエアコンなどの冷暖房費は安くなるのですよね。

出村:それは間違いないです。例えばですが・・・。
三種より一種の方が年間15,000円冷暖房費が安くなります。
でも、三種より一種の方が年間7,000円運転の為の電気代が高くなります
もちろん諸条件により変わりますが、大体こんな感じでしょうか。

大谷:つまり差引き年間8,000円程度、一種の方が安くなるという事ですね。

出村:はい。年間8,000円の差をどう見るかですが、一種の方が熱交換素子の交換などメンテナンス等の維持費も高額になりやすいので、元は取りにくいかなという感じです。ただ上下の温度差が発生しにくいですし、熱だけではなく湿気も交換するシステムも多いので、冬季は乾燥しにくいし、夏季は過湿になりにくい。福井だと冬季でも加湿器なしでも十分な換気システムもあります。

大谷:えーっと、つまりどうすればいいんですか!?

出村:予算が許すなら一種にした方が良いよ。でも三種だから絶対ダメという事でもないよ。だから「工務店を選ぶ基準」には入れなかったよ。という感じです。
そもそも一種でもダメダメなシステムもたくさんあるので、一種熱交換換気であれば良いということでもないんですよね。

大谷:出村さんにしては、なんだかふわっとしてますね。

出村:はい。ふわっとしてます。いや、細かく話すことはいくらでもできるのですが、長くなっちゃうのでやめときます(笑)
要望が多いようなら、もうちょっと一種の種類など掘り下げて話しましょうか
ちなみに僕は、基本的に一種熱交換換気で設計してます。やはり冬季に加湿しなくても(又は加湿量がすくなくても)湿度が保てるというのは魅力です。人が快適と感じる湿度ではウイルスの生存率も大幅に下がりますし。


出村:これも自邸ですが、相対湿度49%ですね。加湿器は使ってません。
絶対湿度は9.6g/m3あるので、この状態だと、インフルエンザウイルスの6時間生存率は10%以下です。

大谷:出村さんのご自宅がうらやましいです。子供も持つ母としては、この時期は感染症に敏感になります。今は、コロナウイルスが怖い事になってますし、我が子も学校が休校になり、毎日どうしようか悩みます。あっ、すみません。話が少しそれてしまいました。
今回は、換気についてでしたが、やはり換気重要なことだと思いました。


皆さん、ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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