日射取得、日射遮熱ってどういう事?

auie新人プランナーの大谷です。
今週も、DEMU建築設計事務所の出村さんにお話しをお伺いいたします。

今、福井県内もコロナウイルス感染拡大を防ぐべく、休校延長やステイホーム、企業にもいろいろな対応策を求められています。

弊社でも、コロナウイルス対策としまして、VRでの内覧会、リモートでの打合せ、そして一部の社員は、在宅ワークに切り替えております。私も、在宅ワークの一人です。子どもの休校が続いていますので、共働きの親としては、在宅ワークは有難い事です。皆さんは、どのようにお過ごしでしょうか?

さて、今回のお話は「日射取得、日射遮熱」について、お話を伺っていきたいと思います

出村:最初に言っておきますが、今日は数字がたくさん出ますが、それほど難しくはないと思います。たぶん。
日射取得や日射遮熱といいますが、大谷さん意味わかっていますか?


大谷:日射取得は熱を取込む。日射遮熱は、熱を遮断することで合っていますか?


出村:はい。夏は日射を取り入れたくないので「遮熱」をして、冬は日射を取り入れたいから「取得」をするということです。


大谷:以前出てきた、断熱の指標であるUA値とはちがうのですか?

出村:断熱とは違います。ちなみにUA値は、あくまで断熱の指標の一つにすぎないので、UA値だけみて「断熱のいい家」とは言い切れないです。さらに言えば「断熱性能がいいから夏も冬も必ずしも温熱的に快適」とも言い切れないです。それは熱の伝わり方が関係してきます。


出村:そこで問題です。熱の伝わり方を3つ答えてください。


大谷:…思い出せずです。これは、中学生の問題ですか?忘れています。


出村:熱は伝導、対流、放射で伝わりますよね。思い出しましたか?


出村:伝導は物体を熱が伝わっていくことで、放射は電磁波によって熱が運ばれる現象です。ちなみに建築では一般的に放射熱の事を輻射熱と言います。窓から入ってくる太陽熱がその代表ですね。その他対流もありますが今回は割愛します。

伝導熱→断熱でコントロール
輻射熱→遮熱でコントロール
となります。

大谷:はい。なんとなく分かってきました。


出村:高断熱住宅は夏は暑いとよく言われるのが、断熱がしっかりしていても遮熱がしていないからですね。窓から太陽熱で暖房して、内部ではエアコンで冷房している状態ですね。しかも、高断熱住宅は入ってきた熱はなかなか逃げていかないので余計に暑くなります。


出村:例えば、断熱(伝導)と遮熱(輻射)でどのくらい影響があるかみてみましょう。


出村:樹脂サッシュ(ペアガラス)のUW値はどのくらいかわかりますか?


大谷:1.5とかでしょうか?


出村:そうですね。YKK330のサッシュとかですと、1.3~1.4くらいですね。

例えば、夏季、南面の窓が1.8m角の大きさで、上記樹脂サッシュ程度、内外温度条件が下記イラスト程度だとすると・・・。

伝導で入ってくる熱量:約35W/h
輻射で入ってくる熱量:約700W/h
 入ってくる熱量の総和:735W/h


出村:どう思いますか?

大谷:輻射の方が圧倒的に多いですね!
でも735Wってピンとこないですが、これって暑いんですよね??

出村:暑いです。ちなみにコタツで600W程度なので、この窓(1.8m×1.8m)が2つ付いていれば窓にコタツ2.5台張り付けて暖房しているのと一緒です。
でも、ここで窓外に遮熱シェードを設置すると、商品にもよりますが80~90%の輻射熱をカットできます。つまり10~20%程度が入ってくるということです。

輻射で入ってくる熱量:約700W/h×0.1=70W/h

大谷:ここまで下がるのですか!

出村:ここまで下がります。つまり、断熱・輻射合わせて735W入ってくる熱量が、適切に遮熱すると105W、つまり元の15%程度まで下がります。なんとなく遮熱の重要性がわかりましたか?

大谷:遮熱シェードをするかしないかで630W/hも違うのは大きいです。

出村:では冬季の場合を見てみましょう。サッシュは同じで、内外温度条件が下記イラスト程度だとすると・・・。

伝導で入ってくる熱量:約-100W/h
輻射で入ってくる熱量:約700W/h
 入ってくる熱量の総和:600W/h


大谷:冬季も輻射の影響は大きいですね。
断熱よりも日射遮熱(取得)の方が大事ということですか?

出村:どちらも大事です。気をつけてほしいのは、この計算は太陽の動きもあるので、一日中の取得ではないということです。上記計算は晴天時のお昼ですね。
断熱は上記数字では控えめですが、24時間365日ずっと影響し続けます。輻射は晴天時の昼間は良くも悪くも影響が大きいですが、夜や曇天雨天時は影響がない(又は激減)という事です。つまりどちらも大事!

大谷:夜は日射取得しないですものね。

出村:はい。逆に放射冷却といって輻射熱が逃げていくのですが、ここでは割愛します。

大谷:分かりました。質問ですが、日射遮熱するには「遮熱シェード」が有効と分かりましたが、日射取得するにはどうしたらいいですか?

出村:日射取得は、単純に南面に窓があればできます。当然ですが、隣家や自分の建物で影になる窓は、南向きについていても日射取得はほぼないですけどね。

出村:今回は少し数字が多くて分かりにくかったかも知れませんが、はっきり言って数字は覚えなくていいです。
なら記載するなよ。と突っこまれそうですが、伝導と輻射の特性や熱量の違いを説明したくて記載しました。大事なのはいくら断熱が良くても、日射取得・遮熱をおろそかにすると、夏は暑いし、冬は暖房費が増えるという事です。これは覚えておいて損はないと思います。

大谷:福井でも夏は暑いですから、遮熱の事も考えないと暑くて大変なことになりますね。正直、遮熱シェードを甘くみていました。遮熱シェードの有無で10倍の熱量が違ってくると、エアコンのランニングコストも随分影響があるのではないでしょうか。これからお家づくりを考えている方はもちろん、今お住まいのお家に取り付けることも可能だと思いますので、参考になればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回もご覧ください。

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