高断熱高気密住宅とウイルスの関係性


auie新人プランナーの大谷です。
今週も、DEMU建築設計事務所の出村さんにお話しをお伺いいたします。

前回換気の話でウイルスの事に触れましたが、今はコロナウイルスが猛威を振るっていますし、もう少し詳しく住環境とウイルスとの関係を教えてください。

というわけで、今週のテーマは「温熱環境とウイルス」についてです。
子供が風邪ひくと心配ですし、この時期は特にハラハラしちゃいます。

出村:そうですよね。住宅の温熱環境の良し悪しは健康に大きく影響します。
ちなみにですが、僕は今の住まいに引っ越して1年半経過しましたが、我が子は熱も出さなくなりましたし、小児科とも縁遠くなりました。

大谷:えっ、出村さんのお子さん熱とか出ていないのですか?
やはり、温熱環境と大いに関係があるのでしょうか。

出村:はい。まずはウイルスですが、温度と湿度によってウイルスの生存率が大きく変わります。例えば、インフルエンザウイルスですが…。

■室温7℃程度の場合
  湿度25%程度→6時間後生存率約65
  湿度50%程度→約40%に低下
  湿度80%程度→約35%に低下

■室温20℃程度の場合
  湿度25%程度→6時間後生存率約65
  湿度50%程度→約5%に低下

つまり、温度が低く湿度も低い環境ではインフルエンザウイルスの生存率が高くなります。そのため、気温が低く空気が乾燥する冬にインフルエンザが流行するのです。
ですので、高断熱高気密化で、人が快適な(=ウイルスに厳しい)温湿度環境を維持しやすいという事は言えます。
これは個人的な意見ですが。今回のコロナウイルスも、共に観光客が多い北海道と沖縄での発症率が大きく違うのも、湿度が関係しているのかなと思っています。
(3月5日現在の感染者数 北海道82名 沖縄3名)

大谷:コロナウイルスが連日ニュースになっていますね。ウイルスなので、温度と湿度など関係していそうというのはなんとなく分かります。

出村:正確には、空気中の水分量に影響うけるのですが。ですから、窓を開けての過剰な換気は感染のリスクを上げる危険性もあるのです。

大谷:室温が冷えるからダメなのですか?

出村:ちょっと誤解を与える言い方だったので、ちゃんと説明すると、感染リスクが上がるというのは、乾燥した空気が大量に室内にはいってくるからです。室内の水分量が大幅に減少するので、ウイルスにもよりますが生存率は上がります。
ですので対策としては、室内湿度を適切に保って、良く触る所(ドアノブやおもちゃ等)や手を、コマメにの消毒液(次亜塩素酸ナトリウム等)で拭取るのが有効だと思います。
もちろん僕は感染の専門家ではありませんので、参考程度に聞いてもらえればと思いますが。
ただ、矛盾する発言ですが…。コロナウィルスに関しては(ノロウイルス等と同様)空気中に浮遊したウィルスで感染するエアロゾル感染の可能性も示唆されてきているので、そういう時は換気はとても有効ですね。

大谷:矛盾してますね。

出村:してますね。これは主要な感染ルートが、接触&飛沫なのか、+エアロゾルなのかによって変わるという事です。エアロゾルの場合は密閉された空間に大人数が密集する場合(保育園など)は、程度にもよりますが換気をしっかりするというのは有効な対策だと思います。
ただ、住宅で家族に感染者がいない場合は24時間換気程度の換気量で、前述の食毒などの対策の方が、感染のリスクは少ないと個人的には思います。
いずれにせよコロナに関してはまだ未解明の部分が多いので、今後の情報を注視していかなければならないと思います。

大谷:他の健康面についてはどうですか?温熱環境の違いで影響があるのでしょうか?

出村:はい。近畿大学の岩前教授のお話になりますが、住宅の高断熱高気密化によって、循環器疾患、喘息やアトピー、関節炎、鼻炎などの症状が改善したという研究結果があります。


大谷:高断熱高気密住宅に引越しをしただけで…というのは変ですが、薬の影響とは別に症状が改善したというのはちょっと驚きです。喘息やアトピーで悩まれている方は多いと思います。
ただ、寒い方が子供が鍛えられて、丈夫に育つという事はありませんか?というか我が子はそのように育ててるのですが。

出村:ないです。(発想が昭和…)むしろその逆、暖かい住まいの方が健康でアクティブに生きられるというエビデンスなら多数あります。
ですから、そういう体育会系的な根性論は科学的に否定されているんです。あ、根性自体を否定してる訳ではありませんけど。


出村:あと、慶応義塾大学の伊香賀教授のお話しも面白いですよ。
1℃暖かい住まいで脳神経は2歳若い」という検証結果です。自立生活が可能な年齢の半減期は76歳と言われていますが、住まいの温度を2℃暖かくすれば、自立できる生活を4年間延長して、80歳まで健康寿命を保つことができると言われています。ですから、脳神経にも影響してくるということですね。

大谷:健康寿命が80歳と言われても、随分と先の事なのでピンとこないですね。
私も80歳になった時の想像ができません。しかし、子を持つ母になり、働くことの大切さ、働くためには自分自身が健康でないといけないと痛感します。子どもが具合悪いと病院に通院させるのもまた大変です。

出村:熱く語りますね。

大谷:健康や子どものことになると、力が入ってしまいます。

出村:でもその通りだと思います。僕自身も長生きしたいという願望はそれ程強くないのですが、今現在をアクティブに生きたいとは思っています。これは、無理やり活動的に生きようという訳じゃないですよ。僕自身もインドア派ですし。
ただ、高断熱住宅だと家事や仕事の効率も上がるし、それがが早く終わればその分子供の為の時間にも余裕ができます。要は家族や自分が楽なんですよ。その結果として「老後の健康」というボーナスがついてくると思ってます。

大谷:あの…健康は分かりましたが、高断熱化でアクティブになるのですか?

出村:そうですね。伊香賀教授も言っているのは温熱環境は、運動能力・学力にも関係しているということです。
簡単に説明しますと、温度が低いと運動意欲も減少し、運動不足になります。
例えば数値で表すと、リビングとトイレ等の温度差が10℃以上あると、一日に移動する歩数が2000歩も減少するという検証結果があります。
幼児であれば特に体を動かすことで、脳が活発になり、学力も上がってくるということです。大人でいうと、家事や仕事の生産性も同じですね。
実際「(体を動かすのが苦じゃなくなって)家事が楽になった」という事は、施主からも言われることがあります。

大谷:そうなんですね。家事や仕事の生産性…大事ですね。
出村さん、ざっくり言うと、高断熱高気密住宅にすると良いことしかないということですよね。

出村:まぁ、適切な設計によるものは、コスト・健康・快適性すべて、メリットがデメリットを上回るということです。そうでない高断熱高気密住宅も沢山あります。

大谷:そうなんですね。もっと色々なことをお聞きして、皆さんに良い家造りに活かしていただきたいです。次回もどうぞ、ご覧ください。



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